読書記録61

wakaba-mark2011-04-23

トゥルー・グリット (ハヤカワ文庫 NV ホ 16-1)

トゥルー・グリット (ハヤカワ文庫 NV ホ 16-1)

’33年生まれで、これまでに発表した長編はわずか5作品という超寡作作家
チャールズ・ポーティスの’68年のベストセラー・ウエスタン。アメリカでは学校の教材に採用されるほど長く深く愛され続けているそうだ。翌年、『勇気ある追跡』という
タイトルでハリウッド映画となり、ジョン・ウエインが生涯唯一のアカデミー賞主演
男優賞に輝いた。
本書は、映画と同タイトルで’70年に邦訳された単行本の新訳・新装文庫である。
アカデミー賞受賞監督コーエン兄弟の監督・脚色・製作、スピルバーグの製作総指揮で再度の映画化(日本での公開は’11年3月)にあわせて出版された。
時は、本文から推し量るに、南北戦争終結の10数年後、合衆国第19代大統領
ラザフォード・バーチャード・ヘイズの時代の1880年頃の真冬。舞台はアーカンソーオクラホマ、テキサスの各州をまたいだアメリカ中西部。インディアンや無法者が闊歩し、保安官やガンマンが活躍する、バリバリの西部劇の世界。
流れ者の悪党に父親を撃ち殺された14才の少女マッティ・ロスが、ベテランの
保安官補コグバーンと若きテキサス・レンジャー、ラブーフと共に苦難に満ちた仇討ちの旅の物語を、それから四半世紀後の1903年にオールド・ミスの本人が述懐する形で綴られる。
前半は仇討ちに出かける準備、後半はウエスタンらしい悪漢と善玉のガンファイトが展開する。しかし何といっても、わずか14才だというのに、マッティは、大人たちを相手に堂々たる交渉・追跡・復讐・冒険をする。弁護士、家畜業者、コグバーン、ラブーフ、そして強盗団の首領に憎っくき父の仇を相手にした、全編にわたる一歩も引かぬ大人顔負けの言動は、まさに「グリット(米口語で、困難にあってもくじけない勇気、気概、
闘志)」そのものであり、本書の読みどころである。
本書は、大西部に、その時代に生きた者たちの“アメリカ魂”を謳いあげた逸品
である。