今日読み終えた本

切断都市

切断都市

何をかくそう私は芦辺拓のファンだ。
彼は本格謎解きミステリー(パズラー)と物語性の融合をテーマとして歴史ものや少年向けの作品も含め、さまざまな作品をこれまでに発表している。
残念ながら彼の30数点の全部の作品を読破しているわけではないが、数点と、少年向けジュブナイルを除いてはほとんど読んでいる。
彼の作品パターンは大きく分けて2つ。ひとつはかつて青少年時代に読んだり観たりしてワクワクしたり、面白かった物語へのノスタルジックな回帰を根底にした、ネオクラシックな「本格謎解きもの」と、もうひとつは社会の抱える病巣、たとえば理不尽な為政者や権力(者)への痛烈な批判をメインのモチーフに据えた「社会派パズラー」である。だが両方共にミステリー作家としてちゃんと本格謎解き(パズラー)の体裁(コード)を整えている。
前者の代表作が私の最も好きな『グラン・ギニョール城』であり、後者の代表がこれもまたたいへん読み応えのあった『十三番目の陪審員』であると思う。
本書は後者に位置づけられる作品であるが、とりわけ彼の最も得意とするフィールド「都市」大阪をテーマにしたミステリーになっている。惜しむらくは謎解きと権力(者)批判がどっちつかずになってしまっている点だ。
私はこの、私と同い年の作者が紡ぎだす、私も彼も同じように青少年時代にワクワク、ドキドキしたようなネオクラシックな荒唐無稽で、それでいて論理的な作品の方が好きだ。
次に読む本『三百年の謎匣』がまさにその範疇の作品になるので大いに期待しようっと。