今日読み終えた本

天使のナイフ

天使のナイフ

今年の「第51回江戸川乱歩賞」受賞作。「乱歩賞」は公募の文学賞としては新人ミステリー作家の登竜門としてあまりにも有名で、西村京太郎や森村誠一東野圭吾真保裕一福井晴敏など多くの有名作家も「乱歩賞」出身者だ。
その受賞作となれば、作者の応募に際してのチャレンジングな姿勢と意欲がうかがえ、それなりによく練りこまれ、丁寧に書き込まれた一定レベル以上の作品として毎回注目を浴びる。
私も歴代の受賞作はほとんど読んでいる。いずれも面白かったが、なかでも一級品として強く印象に残っているのは、第29回(昭和58年)の高橋克彦著『写楽殺人事件』と第47回(平成13年)の高野和明著『13階段』だ。
本書は前評判も高く、大きな期待を持って読んだ。
少年法」、「少年犯罪」という重いテーマに挑んだ現代社会派ミステリーの問題作といっていいだろう。惜しむらくは「乱歩賞」の応募規定に原稿用紙にして550枚という枚数制限があるため、あれもこれもといろんな要素を盛り込みすぎて、あまりにも都合よく最後に結びついてしまう不自然さがあった。
しかし緻密に張り巡らされた伏線の妙といい、読み手を惹き付けるストーリーテリングの巧みさといい、読み応え十分の力作だった。
ちなみにこの作品は私が今年読んだ80冊目の本となった。