今日読み終えた本

自身が本格ミステリー作家である有栖川有栖は、他作家の作品の文庫本の巻末解説や評論も数多くこなしている。本書はそんな<解説・評論>36篇をまとめたものである。その範囲は、自らが本格ミステリーにのめりこむきっかけとなった敬愛するエラリー・クイーンや師と仰ぐ鮎川哲也をはじめ、海外翻訳もの、SF、はてはコミック『パタリロ!』にまで及ぶ。
本書は、それぞれの作品の紹介というよりは、各解説文を通して、彼の本格パズラー遍歴などを織り交ぜながら、結果として本格パズラー全体の解説・評論の集大成という形になっている。本編より先に巻末の解説から読む読者が少なくないため、あまり詳しく解説すると本編の「謎」の一番おいしい、トリックや真犯人のネタばれになってしまうからでもある。本格パズラーの解説文の難しいところだ。
著者は私と同世代(ひとつ年下)だけに、彼の本格ミステリー遍歴は私のそれと似通ったところが多かった。特に、少年少女向けのジュブナイルから海外翻訳ものに小学校高学年頃シフトして、十代には森村誠一にハマったところなど私と全く同じだ。(余談だが、まったくの下戸という点も同じである。)そして今、彼は実作者として本格パズラーの第一人者であり、私は彼の数多くのファンのひとりである。
ともあれ全編を通じて、彼が本格パズラーをこよなく愛している姿勢がにじみ出て、楽しく読んだ。