今日読み終えた本

すべてのものをひとつの夜が待つ

すべてのものをひとつの夜が待つ

「閉鎖空間の悪夢/館ミステリの真髄!」という帯のキャッチコピーに誘われて読んだ。
「孤島の、外部との接触を絶たれた巨大な西洋館」、「集められたわけありの五組十人の男女」、「胡散臭い秘書」、「莫大な遺産相続の権利を得るため、十日という期限内に館に隠された巨大ダイヤモンドを探し出すこと」そして「次々に殺される参加者たち」。道具立てとシチュエーションはまさに本格パズラーのコードそのもの。
著者は本格パズラーというよりは、「18世紀イギリスで生まれたゴシックロマンスの筆法を意識して書いた」そうであるが、主人公の“俺”をはじめ、登場人物たちが若すぎることと、「謎」そのものとストーリー展開と一人称記述の文章そのものがいささか重厚さに欠けることと、なんといっても肝腎の「宝探し」がメインのストーリーになっていないことが残念だった。
「ゴッシクロマンス」なるのもがことごとく内包するという、読んでいてワクワクと胸躍るような「ミステリー、幻想、怪奇、ホラー、伝奇、冒険、恋愛」などエンターテイメント小説の要素がいかんせん消化不良で、著者の意図や意気込みが充分あらわされたとは思えなかった。