今日読み終えた本

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

’98年のデビュー作『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編となる作品。
邪馬台国は・・・』は表題作のほか、「聖徳太子はだれですか?」「維新が起きたのはなぜですか?」など6つの日本史上の「なぜ?」を軽いタッチながら見事な論理展開で説明してゆく短編集で、’99年版「このミステリーがすごい!」国内編に堂々8位にランクインした。
本書も同じシチュエーシュンで、繁華街の外れのうらぶれたバーで、雑誌ライターの宮田六郎が歴史好きのバーテンダー松永の出す、今回は7つの世界史上の「不思議」を7夜連続で、口うるさい某私立大学で歴史を専攻する文学部助手の早乙女静香をむこうにまわして解き明かすといった趣向になっている。
今回の7つの「不思議」はアトランティス大陸ストーンヘンジ、ピラミッド、ノアの方舟始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像と難問ぞろい。六郎はそれらをほとんど事前の知識なく、「聞いたことがある」程度(つまりは一般読者とほぼ同じ状態)から、その場の静香やバーテンダー松永の会話や資料をもとに論理的に自説を展開し、皆を納得させてしまう。六郎の解説のスタンスが私たち読者と同じ目線であるため、難しい言い回しや専門用語がないのでとても分かりやすく、読みやすかった。
本書は、謎の多い歴史に題材を求め、それを解明してゆくプロセスを物語化し、根強い人気を誇る、ミステリーのサブジャンル「歴史ミステリー」の逸品であると共に、現場に居合わせたり、はじめから事件に関わったりせず、(歴史ものだから現場臨場はもちろんもともと不可能だが)伝聞だけで事件を解決する「安楽椅子探偵(アームチャアーディテクティブ)」物の面白さも兼ね備えている。