今日読み終えた本

wakaba-mark2005-09-27

ハードボイルド・エッグ (双葉文庫)

ハードボイルド・エッグ (双葉文庫)

またまた荻原浩である。
最上俊平は33歳。レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルド小説の主人公、私立探偵フィリップ・マーロウにあこがれ、彼のごとく渋く振る舞い、生きることを心情として探偵稼業を始めるが、依頼は飼い主から逃げたペット探しが8割、浮気調査が2割。他人からは「便利屋さん」とか「雑務代行業」と称されている。友達は、はやらないバーのマスターJとホームレスのゲンさんだ。
そんな彼のもとに秘書募集の貼り紙を見てやってきたのが、彼が夢想するようなダイナマイトボディの美女ではなく、80過ぎの片桐綾婆さん。
ふたりは逃げたペットの犬探しの折、本当の殺人事件に出くわす。彼らは事件解決に乗り出すが、そこは荻原浩の世界、ヤクザやアニマルホームの経営者夫婦と関って七転八倒、抱腹絶倒の大活劇が展開される。
最後にはほろっとさせる結末が用意されているのも荻原作品の常套だ。
さてこの作品は今まで4冊読んだ著者の作品の中でもミステリー色の濃い内容になっている。主人公の‘私’は、数々のドジを踏みながらも、危険な目に遭いながらも、着実に真相に近づいてゆく。‘私’や秘書の婆さんを初めとする登場人物たちの人物造形や、ストーリーの骨組みがしっかりしているので、単なる軽薄なユーモア小説とは一線を画した物語である。