今日読み終えた本

ここ数年、五木寛之のなぜかみんなベージュ色の装丁の本がよく書店に並んでいる。
私も『大河の一滴』、『他力』、『人生の目的』、『不安の力』、『運命の足音』、『気の発見』などそれらのエッセイや、昨年4、5月のNHKテレビ「人間講座」のテキスト『いまを生きるちから』など結構読んでいる。
毎年自殺者が3万人を超える、今、この苦難の時代の「生き辛さ」というか、閉塞感、将来の不安感から救われたいと思い、打開策はないものかと模索する私たちにとって著者の一連のエッセイはタイムリーにヒットしているのだろう。
だいたいどの本を読んでも仏教(真宗、特に親鸞蓮如がよく登場する)の話や、かつて日本人が大切にしてきた情や信仰、とりわけ<悲しみ>や<感傷>が出てくる。よく言われるプラス思考でガンガン行こうという話はない。彼は文中でも「人間にとって、プラス思考だけが大事なのであろうか。」とはっきり述べている。
さて、そういった一連の流れの中の本書である。今回は「元気」がテーマで、一見マイナス思考のように思えるさまざまなことが述べられているが、私が一番関心をもったのは「元気に生きるための三つ方法」のくだりである。
1.「諦念」=ギブアップすることではなく、「明ラカに究メル」こと。「自分のタイプを冷静に確かめ、そして、その限界を知り、その枠の中でできることをやろうと納得する。」
2.「観念」=つよくイメージする。「自分流に『元気の海』というものを思いえがくことがある。」
3.「放念」=こだわらない。「ひとつのことをいつまでもふかく追わない。」、「めまぐるしい雑音の巷に生きる以上、五年、十年先のストーリーを考えることは意味がない。目の前にきたボールを蹴るしかないのだ。」
私も彼のエッセイを数多く読んで、こんな感想を書いていると「そうか、分かった。」というような気がなんだかしてくるから不思議だが、実際に実践してみることは難しい。現実は厳しい。彼が確固とした信念を持ってこれら一連のエッセイが書けるのは、やはり70年以上生きてきて、いろんな体験をしてきた結果であろう。晩年といわれる年齢を迎えてこそこういう境地に達したのだろうと思う。私なんかの若輩者は、彼の意見に共感はできても、そのレベルに到達するにはまだまだ苦労を重ねなければならないだろう。