今日読み終えた本

海賊モア船長の遍歴

海賊モア船長の遍歴

こころの障害をテーマにした問題作『症例A』の作者多島斗志之が書いた、まったく趣を異にした海洋冒険ロマン。
時は17世紀末イギリス。元東インド会社の航海士ジェームズ・モアは国王の委任状を与えられたキッド船長率いる海賊討伐船「アドヴェンチャー・ギャレー」の乗組員として雇われた。船は大西洋から喜望峰を越えてはるばる海賊たちの巣窟、マダガスカルへ到着するが、一向に海賊と遭遇せず、いたずらに時が過ぎてゆく。経費ばかりかかることに業を煮やしたキッド船長は、皮肉なことに自ら海賊行為に手を染めてしまう。やがて自分がしでかした悪事を認識しないまま、キッドは別の船で本国に帰ってしまう。
モアは「アドヴェンチャー・ギャレー」を譲り受け、7人の仲間を連れ独立する。海賊モア船長の誕生である。
アラビア海、インド洋からマレー半島インドネシアのジャワ海、モルッカ諸島まで股にかけた海賊船「アドヴェンチャー・ギャレー」の海洋冒険活劇が全編にわたって展開される。
モア船長は悪事をなしても非道はせず、あくまで金銀財宝を奪うため、操船技術を駆使して戦うのだ。相手はオランダ商船、ムガール帝国の船から果てはライバルの海賊船「タイタン」のブラッドレー船長まで。
モア自身が背負う過去の謎、船員たちとの絆、海賊船同士の駆け引き、ムガール皇帝の孫娘の誘拐、そして自らも囚われの身となったり、波乱万丈のストーリーが息もつかせず続く。
今回は何も考えず、ただただエンターテイメントとしてこの荒唐無稽な海洋アドベンチャーを楽しんだ。
ちなみについ先日、本書の続編『海賊モア船長の憂鬱』が出た。こちらは3360円と高価で分厚い本であるが、いつか図書館に入る機会があればぜひ読んでみたいと思う。