今日読み終えた本

審判

審判

本書は深谷忠記の59作目の、現在のところの最新作であり、ミステリーの愛読者、とりわけ彼のファンの間ではベスト5のうちにあげる人も多い作品である。
私は著者の本を読むのはこれで3作品目だが、今月2日のこの日記で感想を書いた『目撃』同様、本書のような「法廷」がらみで、無実なのに警察の取調べで無理やり自白させられた「冤罪」ものはほかにも著作があり、「旅情ミステリー」、「社会派サスペンス」などと並んで、彼の得意分野のひとつだそうだ。
さて本書は上記要素を含んだ本格ミステリーである。
18年前に起きた幼女誘拐殺人事件の捜査を担当した元刑事、被害者である幼女の母親、無実を叫びながらも犯人として懲役15年の有罪判決を受けた男。物語はこの3人を中心に進む。刑を終えて出所した男が元刑事の前に姿を現すところから物語は始まる。
よくある「冤罪」ものかと思って読んでいったところ、それがまるで違う。
本の帯に「意想外の展開、衝撃のラスト」とあったが、その通りに、すこし凝り過ぎではないかと思えるほど二転三転する事件の真相と、あらかじめ織り込まれた伏線が細部まで行き届いていて、「あ、あそこの部分はこういうことだったのか。」と頷けるフェアな本格パズラーである。