今日読み終えた本

コールドゲーム (新潮文庫)

コールドゲーム (新潮文庫)

たっぷり笑えて、しみじみ泣ける「ユーモア・人情」小説の荻原浩の書いた「青春ホラーミステリー」。
私が読んだ彼の本は本書が8作品目になるが、今までとは趣が違っていた。
しかし、文章のタッチや「何かに奮闘する」姿を描く著者のスタイルは変わっていなかった。今回「奮闘する」のは17才の高校生、光也。
彼は3年生の夏休み、甲子園の神奈川地区予選で敗退して野球部を引退。目標を見失っていた。そんな時、中学2年時代のクラスメートに次々事件が降りかかる。当時クラス中のイジメの標的にされていた少年・トロ吉の復讐なのか…。光也たち有志は「北中防衛隊」をつくり、何とか警察の手を借りずに4年間でひどく凶暴になった敵を見つけ出そうとする。しかし犠牲者は増えてゆき、ついに死者が出る。つづいて当時の担任教師までも火事で命を落とす。
光也たちは次の標的となったかつての女子クラスメートをやっと捜し出しすが、襲い掛かる犯人をカーチェイスして命がけで彼女を救う場面は手に汗握るスピーディな展開でスリリングだ。
そして背筋の寒くなるような夏の『コールドゲーム』は一気にクライマックスに向かう。
光也は事件とのかかわりの中で、仲間たちの前で自己主張ができるようになったり、本気で体を張って、元クラスメートたちを救おうとしたり、犯人トロ吉を捜し出そうとする。そして意外な真相が明らかになり、事件は解決し、彼は新しい目標をほのかに見つけて、少しだけ成長しているのだ。
本書は怖さと切なさを等分に含んだホラーサスペンスであるとともに、光也の終わらない夏休みを描いた青春小説なのだ。