今日読み終えた本

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

’05年の海外翻訳ミステリー部門で、「このミステリーがすごい!」では第1位に、「週刊文春ミステリーベスト10」では第2位に輝いた短編集。(因みに本作と1位、2位を争って、「このミス」第2位、「週刊文春」第1位となったのは、マイクル・コナリーの『暗く聖なる夜』。こちらも近々読むつもりだ。)
1958年から82年の間に書かれた17の短編からなる日本で編集されたオリジナル作品集である。お金の価値基準を除いては時代的な古さはまったく感じられず、むしろ現代的なモダンさすら漂っていた。
この作家は今回はじめて知ったが、無駄な言葉や描写を徹底的にそぎ落としたシャープな文章と、アメリカンな機知(ウィット)とひねり(ツイスト)がきいた各ストーリーは読んでいてテンポもよく、短編小説として申し分なく楽しめるスタイルだと思う。
難を言えば、アメリカ人にウケるウィットと日本人のそれとが微妙に異なるため、作品によって著者の意図したオチが私にはよく分からなかったことくらい。81年MWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀短編賞を獲得した『エミリーがいない』などがそれで、恥ずかしながら私はオチの部分がよく理解できなかった。
印象に残った作品をいくつか・・・
1.表題作にして最も長い作品『クライム・マシン』--着想が奇抜で、登場する「殺し屋」の心理描写が絶妙。
2.『歳はいくつだ』--なんともいえない哀感が漂う秀作。
3.最も短い作品のひとつ『殺人哲学者』--最後の一行にとどめをさされる逸品。
4.『カーデュラ探偵』シリーズの4編--E.D.ホックの『怪盗ニック』を髣髴とさせるアメリカンなウィットとユーモアのきいた、特異な設定の佳作。
この作家は生涯に350編にも及ぶ短編を書いたそうだが、もっともっと紹介してもらって読んでみたくなった。