今日読み終えた本

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

筑摩書房の「ちくまプリマー新書」といえば、昨年No.011の藤原正彦/小川洋子の対談『世にも美しい数学入門』で話題を呼んだが、今回創刊1周年を迎えて、新書の体裁そのままの(ノベルズ仕様でない)ユニークなスタイルで‘小説’をラインナップした。
それがNo.X01という番号を持った本書、天童荒太、実に6年ぶりの書き下ろし長編小説である。
ワラ、タンシオ、そしてギモは、関東のはずれの県内3番目に大きい市に住むフツーの高校生だ。ある時ワラはエキセントリックな高校の留年生ディノに出会う。彼女らはディノの行為をヒントに「いろんなことで傷ついている人がいる。その傷を受けた場所へ行き、包帯を巻く。そんなことで当人の心の負担が軽くなれば・・・。」と“包帯クラブ”を結成し、ホームページ上で相談を受けた場所に包帯を巻きにでかける。
やがて依頼件数も増え、市内のあちこちに包帯が巻かれ、それらが汚れはじめて問題となり、“包帯クラブ”は解散に追い込まれてしまう。
著者のこれまでの作品は、『家族狩り』、『永遠の仔』、『あふれた愛』など、社会性のある重いテーマを扱ったものが多かったように思う。
本書はそれら従来作のような、癒されることのない悩みや傷を背負った若者たちの重苦しい物語ではなく、戦わないかたちで大切なものを守ろうとしたワラたちの行動が、つねに前向きでかつ生き生きと、新鮮な筆運びで描かれていた。
肩の力を抜いて読むことができた。カジュアルな新書スタイルの小説ということで、著者が若い読者層を意識して、あえて明るい作風で仕上げたのだろう。