今日読み終えた本

罪の段階〈上〉 (新潮文庫)

罪の段階〈上〉 (新潮文庫)

罪の段階〈下〉 (新潮文庫)

罪の段階〈下〉 (新潮文庫)

推定無罪』、『立証責任』のスコット・トゥロー、『法律事務所』、『依頼人』のジョン・グリシャムらと並んでアメリカのリーガル(法廷)・サスペンスの代表的作家、リチャード
・ノース・パタースンの再デビュー作。本国ではベストセラーになったそうだが、日本
でも「週刊文春ミステリー・ベスト10」’95年海外部門第9位にランクインされている。
文庫にして上・下巻合わせて982ページにも及ぶ大長編である。
第一線の女性TVインタビュアー、メアリが有名作家を射殺した。レイプに対する正当防衛か、殺人か。残されたスキャンダラスなテープを軸に展開する法廷ミステリーである。弁護を引き受けたクリスは、被告メアリとはお互い15年前の事件の関係者として、
そして彼女との間に子供までもうけた因縁があった。
共に証人を立てて、状況証拠から有罪を主張する検察側と、メアリから真実を明かされないままに苦しい弁護をせざるを得ないクリス。最後の最後に“本当に起こったこと”が明らかになるまで、読者にも真相が分からない迫真の法廷シーンが繰り広げられる。
主に下巻で展開するこの法廷シーンはもちろん本書の中核をなす場面だが、さらに
ふたつの要素がこの物語にいっそうの深みを与えている。ひとつはクリスと15才の息子カーロとの親子の絆の問題。そしてもうひとつはメインテーマをレイプとしたことからもうかがえる、女性の社会的地位と家庭の問題---具体的にはクリスの女性アシスタント弁護士、テリーザの家庭と仕事をめぐっての夫とのかかわりの問題に代表される---男女の葛藤についてもしっかりと描かれている点が挙げられよう。
本書は、これら人間ドラマを横糸に、法廷サスペンスを縦糸にして物語が織り込まれ、読むものに感動を与えている。