今日読み終えた本

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

アメリカのSF・幻想小説家として知られる著者の、1941年から1957年にかけて
書かれた、ミステリー色の濃い8つの作品を選んで集めた短編集。20世紀中ごろに
主に短編で活躍した作家だが、最近日本では再発見されて邦訳短編集が続々とリリースされているらしい。
本書は、’05年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門では第3位に、
このミステリーがすごい!」海外編では第4位にランクインしている。
雨の路上で拾った瀕死の少女を自宅へ連れ帰り、18年間無欠勤だった仕事を休んで必死に介抱する孤独な男の物語(「輝く断片」)をはじめ、異色の音楽ミステリー(「マエストロを殺せ」)、先駆的なサイコサスペンス(「君微笑めば」)、さらにニュースを毎日
欠かさずチェックする平凡なサラリーマンが妻によって新聞もテレビ、ラジオも奪われた結果、狂気に走る(「ニュースの時間です」)、無垢な男がふとした拍子に犯罪へと奔走していく(「ルウェリンの犯罪」)など、収録されている作品はいずれも、まっとうな意味でのミステリーではなく、特異な発想に基づく異色・奇想小説の雰囲気を持つものばかりである。
短編なのでストーリーの背景や設定・登場人物の人となりの説明などが簡略化されているのもさることながら、どの物語もシチュエーションや進行、および結末が独特の
奇妙な空気をはらんで急展開するので、私には理解するのがいささか難しく、煙に巻かれたようだった。
ともあれ収録作のいくつかには、社会から阻害されていて、普段はひっそりと目立たない主人公たちが、何かをきっかけに反社会的な方向に暴走してしまう危うい存在として登場する。そんな彼らの戸惑いや怒り、悲哀をスタージョン流の独特な語り口で切実に描いているように感じた。