今日読み終えた本

デフォルト[債務不履行]

デフォルト[債務不履行]

’05年「第2回ダイヤモンド経済小説大賞」大賞受賞作。
このところ経済関係の問題や事犯が、新聞やTVのニュースで世間の耳目を集めて
いることもあり、小説のフィールドとしては実に現代的かつタイムリーな世界である。
加えて最近の経済小説は、株や相場といった投機的な材料をもとに、‘アクの強い
主人公’が個人的に暗躍する泥臭い小説から脱却・発展して、外資のインテリジェントなトレーダーがおこなう、それこそ分刻み・秒刻みのディールを描いたり、最先端の
ネット・IT技術を駆使した情報戦があったり、銀行や商社など企業の腐敗・内紛から、外国を舞台にしたスケールの大きな国家的プロジェクトへの融資に絡む物語にいたるまで、サスペンス色、ミステリー色が濃い、洗練されたエンターテインメントになってきたように思う。
不良債権問題が終結したなんてうそだ!」信念を曲げることなく真実をリポートした
エコノミストがいた。しかし日本銀行財務省金融庁・大手都市銀行のパワーエリートたちによる腐敗の構造が、彼を閑職に左遷し、職を奪い、ついには死に追いやった。
復讐に立ち上がった同志たちは、ターゲットを金融の要・日銀に定め、内外の信用を
失墜させるデフォルト(債務不履行)に追い込むシナリオを描き、実行(オペ)する。
リベンジ側の役者が都合よく揃いすぎの感は否めないものの、さすが経済ジャーナリストの著者だけあって、オペ自体はリアリティーがある。
特に、日銀側が期限までにフィリピン・ペソを調達・決済しないとデフォルトしてしまう、そのタイムリミットぎりぎりの両者の攻防のくだりはサスペンスフルで緊迫感にあふれ、思わずどんどんページをめくってしまうほどの最大の読みどころである。
本書は、経済の専門的な知識や仕組み、難解な経済用語などは理解できなくても
読める、経済小説の枠組みを超えたエンターテインメントに仕上がっており、
いわば現代における経済版“必殺仕事人”ともいえる物語である。