今日読み終えた本

ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

本書は、英国におけるミステリーの頂点、「CWA(英国推理作家協会)賞」の’03年度ジョン・クリーシー記念賞(最優秀処女長編賞)受賞作である。
日本でも、’03年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第3位、「このミステリーがすごい!」海外編第7位にランクインしている。
大学院で学究を志すベンは、母親のアルツハイマー病の悪化のため、退学・帰郷を
余儀なくされた。その母親も他界し、今は生まれ故郷のメイン州の田舎町で、父親の後を継いで若き警察署長になっている。
しかしこの牧歌的な小さな町で、大事件が起こった。湖畔のロッジで、ベン自身が、
片眼を撃ち抜かれたボストンの地方検事補の死体の発見者となったのだ。
捜査の指揮は被害者の地元ボストン市警が握ることとなる。
自分の町で起こった殺人事件に関われないもどかしさから、ベンは偶然知り合った
警察OBのジョンとともにボストンへの出張の旅に出る。やがて10年前の「警官殺し」にたどり着くが、そこで、とんでもない事態に巻き込まれることに・・・。
そして物語は終局で大きく転回し、最後には意外な真相が明らかになる。
私は、本書のタイトルと表紙の写真から、大都会の荒廃した裏社会を舞台にしたハードボイルド・ギャング・アクション・ストーリーを想像したのだが、その予想はいい意味で裏切られた。警察による地道な捜査がたんねんに描かれていたり、ベンが、彼を取り巻く登場人物たちの中で揉まれて、悩みながらも成長してゆく姿が活写されていたり
して、本書はじっくり読ませる警察小説であると同時に、青春小説でもあった。
ここにまたひとり、ウィリアム・ランデイという実力派の大型新人作家が登場した。