今日読み終えた本

ザ・ポエット〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ザ・ポエット〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ザ・ポエット〈下〉 (扶桑社ミステリー)

ザ・ポエット〈下〉 (扶桑社ミステリー)

マイクル・コナリーの今年の話題作『天使と罪の街』を購入して、「訳者あとがき」と
「解説」を先に見たら、なんと『天使と罪の街』は、本書の続編なので、「まず先に本書から読むべし」とあるではないか。
ともあれ、本書は、’97年度のアンソニー賞をはじめ、米・独・仏のミステリー賞5冠に輝く、コナリーにとっての出世作であると共に、長編5作目にして、初のノン・シリーズ
ものである。
締め切り間際というハンデがありながらも、’97年、「このミステリーがすごい!」海外編第15位にランクインしている。
全米にわたり、殺人課の刑事ばかりを自殺に見せかけて殺害する、稀代の連続殺人鬼とFBIとの戦いの物語である。
きっかけは、コロラド州デンバーの新聞記者、ジャックの双子の兄である刑事の自殺事件だった。どうしても兄の自殺が腑に落ちないジャックは、独自の調査で犯人の自殺偽装を暴く。
かくして、殺人現場を自殺現場に仕立て、エドガー・アラン・ポーの詩句を遺書に残すこの殺人鬼は、「詩人(ザ・ポエット)」というコードネームを与えられる。「詩人」は3年間で8人もの刑事を殺害していた。
ストーリーは、特別にFBIの捜査班の内部に入ることを許されたジャックが述べる一人称の「詩人」捜査過程と、容疑者らしい、幼児の写真を撮る男の三人称記述が交互に交錯する構成で進む。ついにFBIは、この男の足取りをつかみ、接触を図るのだが・・・。
そこからラストまでの150ページが、本書のほんとうの“読みどころ”であり、逆転につぐ逆転のめくるめく世界が展開する。そして明らかになる驚愕の真犯人・・・。
本書は、コナリーが、<ハリー・ボッシュ>シリーズではなく、あえてノン・シリーズで挑み、ストーリー・テラーぶりを十分に発揮した、サスペンスの王道をゆく傑作である。