今日読み終えた本

チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マイクル・コナリーが’02年に発表し、翌年邦訳されたノン・シリーズの作品である。
<ハリー・ボッシュ>シリーズとは一味違う、ノンストップ・サスペンスに仕上がっている。
主人公は天才ナノテク科学者のヘンリー・ピアス。恋人と別れ、心機一転、転居した
マンションに、ひっきりなしに間違い電話がかかってくる。いずれも「リリーはどこだ?」というエスコート嬢目当ての男性からのものだった。アダルトサイトで確認すると、確かにヘンリーの新しい住所の電話番号と同じだった。客たちの話では、つい最近までこの電話番号でリリーと連絡がついたらしい。ひょっとしてリリーの身に何か起こったのでは、という思いに取り憑かれたヘンリーは、素人探偵よろしくリリーの所在を探り始める。
はじめは、彼女の無事が確認できさえすればいいという気持ちだったが、どんどん
深みにはまっていき、暴行を受けて入院したり、ついにはリリー殺しの容疑者に仕立て上げられたり、にっちもさっちもいかなくなった・・・。
そもそもリリー探しの動機には、彼自身の誰にも言えない暗い過去の体験が影響していたのだ。さあ、八方ふさがりの状況を彼はどう打開していくのか・・・。
やがて明らかになるのは、予想をはるかに上回る巧緻な陰謀だった。ヘンリーは、
充分に練りこまれた恐るべき罠にはまったのである。
本書では、ヘンリーのリリー探しのアプローチも、危機的状況打開の分析も、科学者
らしい色合いを持っていてユニークであり、同時にコナリーらしいスピード感あふれる
スリリングなサスペンスをも味わうことができる。