今日読み終えた本

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎13冊目の本書は、デビュー直後に書いた短編から、今回書き下ろした
中編まで、四つの物語からなる作品集である。
「動物園のエンジン」―デビュー長編『オーデュボンの祈り』のような不思議な雰囲気のある短編。
サクリファイス」―『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』に出てきた探偵兼泥棒の黒澤が
スピンオフで、この中編では主人公として登場する。ある寒村で昔から伝わる“こもり様”の風習を、伝奇ミステリー風の道具にして、“本格パズラー”っぽい物語に仕上げている。
「フィッシュストーリー」―表題作。私は本書でこの短編が一番好きだ。ふとした偶然(!?)が、40数年を隔てたところで意外な影響を及ぼす物語なんて、いかにも伊坂幸太郎らしい。
「ポテチ」―本書のための書き下ろし中編。黒澤が今度は脇役で登場する。さすがは書下ろし、随所に仕掛けられた伏線を、ラストでまさに “伊坂ワールド”らしく収斂させる手腕はさすが。
今回収録の作品はいずれも独立した話で、書かれた時期も、テイストもまちまちなので、一冊を通して楽しむということはできなかったが、それでも、とりわけ後半の2作品は、ファンとしてじゅうぶん“伊坂幸太郎の世界”を堪能することができた。