今日読み終えた本

ママの狙撃銃

ママの狙撃銃

何かに“奮闘する”人の姿をコメディータッチで描いて、しかも最後にはホロリとさせて
くれるのが、デビュー作以来の荻原浩のお得意のパターンである。ある時は村おこしの青年団員だったり、ある時は暴力団のCIを担当する広告マンだったり、ある時はハードボイルド小説に心酔する探偵だったり、ある時はヤクザの組長の息子を誘拐してしまった若者だったり、ある時は潰れそうなテーマパークを建て直す公務員だったり、またある時は人の言葉が分かる猿(?)だったり。
今回“奮闘する”のは、荻原ワールドでは初登場の、女性主人公である。福田曜子は、41才。結婚14年目でちょっと頼りないがやさしい旦那さんと、愛すべき中学生の娘と幼稚園の息子を持つ2児のママだ。やっと庭付きのマイホームを手に入れて、趣味のガーデニングに余念がない。
そんなある日、かかってきた電話。それは25年ぶりに「仕事」を依頼する男からのものだった。そう、曜子はかつてアメリカで祖父のエドに鍛えられ、一度だけ「仕事」をした経験のあるクウォーターのスナイパーだったのだ。
一度は断るのだが、夫がリストラにあい、さらには友人に騙されるに至ってついに立ち上がる。愛する家族を守り、23年残っている家のローンを払うため、娘をイジメから守るため、ママは“奮闘する”。
明日の記憶』を知る読者には多少食い足りない作品かもしれないが、ここに、ファンにとっては待ってましたとばかりの、“たっぷり笑えて、しみじみ泣ける”、お馴染みの
荻原浩の世界が展開するのである。