今日読み終えた本

真夜中のデッド・リミット〈上巻〉 (新潮文庫)

真夜中のデッド・リミット〈上巻〉 (新潮文庫)

真夜中のデッド・リミット〈下巻〉 (新潮文庫)

真夜中のデッド・リミット〈下巻〉 (新潮文庫)

スティーヴン・ハンターが、まだ『極大射程』や『悪徳の都』など、“ボブ・リー・スワガー
&アール・スワガー・サーガ”を書く前の’88年に発表した、ハンター初期の大型冒険小説である。
本書は、’89年、「このミステリーがすごい!」海外編第2位にランクインしているが、
この時1位を争ったのは、のちに「週刊文春ミステリーベスト10」の「20世紀オールタイムベスト1」にも輝いた、トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』だった。そのことからも、
いかに当時本書のインパクトが強かったかが、容易に想像がつく。
本書は、核ミサイル基地を占拠した謎の武装集団に孤独な闘いを挑む特殊攻撃部隊の指揮官、プラー大佐(彼はヴェトナム帰りである)の姿をメインに描いている。
ストーリーの進行は三人称多視点で、このプラー大佐率いる特殊部隊デルタ・フォース、ミサイル基地を設計した科学者とその妻、ふたりのヴェトナム戦争時のトンネル
・ネズミ、ソ連の在米情報部員、FBI特別捜査官、ミサイル基地を占拠した謎の集団、そして、核ミサイル発射キー奪取のためにこの武装集団によって基地に連れてこられた平凡な溶接工とその家族など、多彩な人々が入れ替わり立ち代り登場する。
そして、忘れてはならないのは、本書が人類の命運を握るタイムリミットサスペンスというシチュエーション下にあるというところであろう。
本書は、さまざまなアングルから描かれており、読者にハラハラ・ドキドキしながら飽きることなく読み切らせてしまう、心憎い構成になっているのだ。