今日読み終えた本

治療島

治療島

本書は、ドイツで’06年夏に出版されるや、一大ベストセラーとなったという話題作
である。読んでみて、著者セバスチャン・フィツェックの、デビュー作とは思えないほどのスピード感と、アクロバティクなその結末に瞠目した。
メインの設定は、本格ミステリーの舞台にもなりそうな、北海に浮かぶ、暴風雨で外界と交通が隔絶された孤島での元精神科医ヴィクトルと謎の美女アンナとの神経戦とでもいえるようなやりとりである。
ヴィクトルの娘は4年前に「失踪」しており、生死も行方も知れなかったが、自らを統合失調症というアンナは、なぜか娘のケースとそっくりな話をはじめるのだった。ところがどうもこの女は怪しい。ヴィクトルを取り巻くシチュエーションもどうもおかしい。そして、やがて彼を極限まで追い詰めるふたりの「攻防」は、本書の最大の読みどころである。
しかし、決してそれがこの物語の『着地点』ではない。最後の最後、エピローグで明かされるどんでん返しは少し余分のような気がしたが、フィツェックはとてつもないトリックを読者の前に用意していたのである。
本書は、プロローグとエピローグ、そして全60章一気読み必至の、新種のサイコ
・サスペンスの傑作である。