今日読み終えた本

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)

講談社の文庫情報誌『IN・POCKET』11月号の特集、「2007年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で、「作家が選んだ」第1位、「総合」第3位に堂々ランクインした作品。岩波文庫として上梓されたのは今年2月だが、実際は’46年に書かれた、古典とも
いうべき戯曲である。
時は1912年のある春の宵。舞台は英国の裕福な実業家の家庭で、娘の婚約を祝うディナーが一段落した食堂。突然、警部と名乗る男が訪れ、ある若い貧しい女性が
消毒剤を飲んで自殺したことを告げる。彼は、一家4人と娘の婚約者がこの事件に
深く関わっていることを次々に暴いてゆく。そして彼らこそが彼女を自殺に追い込んだのだと鋭く追求する。
本書は、ミステリーとして読んでも傑作であるが、上流階級一家のひとりひとりの秘密を暴き、彼らの傲慢さを痛烈に風刺しているのだ。
緻密な構成といい、畳み掛けるような快調なテンポといい、そして最後数行の大どんでん返し。思わず一気読みの文庫161ページだった。