今日読み終えた本

女彫刻家 (創元推理文庫)

女彫刻家 (創元推理文庫)

本書でミネット・ウォルターズは、デビュー2作目にして、しかも英国の作家でありながら、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」の’94年度のベスト・ノベル(最優秀長編賞)を受賞している。また日本では’95年、「このミステリーがすごい!」海外編で堂々第1位に輝いた。
フリーライターのロザリンドは、犯罪もののノンフィクションを執筆するために、刑務所内で<彫刻家>の名で知られている女囚を訪ねる。その巨漢の女囚オリーヴは、母親と妹を斧と包丁でバラバラにし、それを再び人間の形に並べて、首をすげかえるという
猟奇殺人の罪に問われて、無期懲役を言い渡されていた。しかし、オリーヴとの面会を通じて、事件に対してジグソーパズルの一片がうまく収まらないような違和感を抱いたロザリンドは、巡礼するように、当時の関係者に対して聞き込みを進めていく。「本当に彼女がやったのか・・・?」
冒頭から異形のサイコ・キラーと刑務所で面会という、『羊たちの沈黙』を彷彿とさせるシーンからはじまる物語だが、続くストーリーが、オリーヴの無実を明らかにせんとするロザリンドの、ヒロイン・ハードボイルド冒険譚のような様相を呈していて、「基本的には」ストレートに読めるようになっている。しかし、そこはウォルターズ、いったん解決を見た後のエピローグの最期の数行が、なんとも拭い去りがたいデモーニッシュな後味を残す。