今日読み終えた本

隠蔽捜査 (新潮文庫)

隠蔽捜査 (新潮文庫)

’05年、「このミステリーがすごい!」国内編第20位にランクインした吉川英治文学
新人賞受賞作。
竜崎伸也警視長は、46才。警察庁長官官房の総務課長をつとめる、いわゆるエリートキャリアだ。物語の前半では、かなり毛色の変わったコチコチの人物のように描かれる。
都内と近郊で起きた3件の殺人事件。被害者はいずれも少年時代に凶悪な事件を
起こしながら、法律に守られ短い刑期で社会復帰してきた者ばかりだった。
彼はマスコミ対策に遺漏の無い様に事件の推移を見守っていたが、犯行の間隔から現職警察官の犯行ではないかと考える。捜査はその通りに進み、容疑者が特定され、ある警察官が自白するが、この警察組織を揺るがす大事件に、予測される警察批判を怖れた警察庁上層部の一部が、真相を隠蔽しようと動きはじめる。竜崎は断固これに反対する。
一方竜崎家でも問題が発生する。彼の息子がヘロインを使用していたのだ。もみ消すか、自首させるか、表ざたになれば自分の築き上げてきた地位も仕事も崩れ、娘の
縁談もご破算になってしまう。迷った末に彼が選んだ道は・・・。
私たち庶民から見れば、鼻持ちならない超エリートだが、特権ある者は重い責務を負うということをモットーに、竜崎はすべてに原理原則で向きあい、正義を全うしようと
する。
本書は、今までになかったキャリア官僚を主人公に据えた、警察という特殊な組織の中でのエリート官僚の動きを追った、異色警察官僚小説である。