今日読み終えた本

KIZU―傷― (ハヤカワ・ミステリ文庫)

KIZU―傷― (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シカゴの新聞記者カミルは、8年ぶりに南へ車で11時間かかる故郷の町へやって
きた。そのミズーリ州最南端の町ウインド・ギャップで昨年の8月に少女が絞殺される事件が起き、今またひとりの少女が行方不明になっており、連続した事件ではないかという上司からの指示でその町の出身者である彼女が派遣されたのだ。
やがて行方不明の少女は死体となって発見される。少女たちはふたりとも歯を引き抜かれていた。実家の大きな屋敷に滞在しながら、カミルの関係者への取材と記事づくりが始まる。
しかし、屋敷での生活、母親との確執、家族や昔からの知り合いとの関係を通して、
カミル自身の過去も明らかになる。なんと彼女はかつて自分の身体に文字を刻む自傷癖があって、いまも傷として残っているのだ。さらに、片田舎の小さな町の閉塞感と
緊密な人間関係が緊張を生み、じわじわと輪が狭まってくるような恐怖が、そのたびに古傷がうずくようで彼女を捕らえて離さない。
そして心身ともに満身創痍の状態のカミルは、悲劇的な真相にたどり着く。
本書では、カミルの取材や警察の捜査よりもむしろ、多くのページで自分の心に向き合う彼女の姿が、痛々しいまでの一人称記述で語られている。
まるで現代が抱えている問題と苦悩を象徴するかのような物語である。
ちなみに本書は、アメリカの作品ながら、英国におけるミステリーの頂点、CWA(英国推理作家協会)賞の’07年度ニュー・ブラッド・ダガー(最優秀新人賞)とイアン・フレミング・スチール・ダガー(最優秀スリラー賞)をダブル受賞している