今日読み終えた本

解雇通告〈上〉 (新潮文庫)

解雇通告〈上〉 (新潮文庫)

解雇通告〈下〉 (新潮文庫)

解雇通告〈下〉 (新潮文庫)

ジョゼフ・フィンダーの『侵入社員』に次ぐ「企業物サスペンス」第二弾である。
’06年度のバリー賞最優秀サスペンス賞を受賞した、文庫にして上・下巻合計992
ページにも及ぶ大長編だ。
物語はニック・コノヴァーという全米有数のオフィス家具メーカーのCEOを主人公に
進んでゆく。彼はオーナー企業からの命令で1万人の従業員の半数をリストラして、
“首切りニック”と言われ、町の嫌われ者になってしまった。そんな大鉈をふるっても
会社の業績は上向かず、部下のCFOとオーナー企業の担当者が、CEOであるニックに無断で会社の身売りを画策し始めた。
一方家庭生活でも昨年事故で妻を亡くし、むずかしい年頃のふたりの子供を抱えて
四苦八苦だ。とりわけ16才のルーカスは喫煙で停学処分を受けてしまう。
まさに四面楚歌の状態のニックだが、さらに、万全なセキュリティーに守られた邸宅の壁にいたずら書きをされたり、ペットを殺されたり不安は尽きない。
そんな折、ある深夜、不審な侵入者を射殺してしまう。死体の始末を社の保安主任
エディに任せるものの罪の意識に苛まれ落ち着かない。ひたひたとニックに迫ってくるのは、もう一人の主人公とも言える、殺人課の黒人女性刑事オードリー。彼女の夫も
ニックの会社を解雇されていた。
窮地のニックはついに捨て身の反撃に出るが・・・。
フィンダーは、綿密な取材を元に、最高経営責任者CEOを、雲の上の存在としてではなく、私たちと等身大の人間として描くことにより、まるでどこの企業、企業人にいつ
起こってもおかしくないドラマに仕上げている。
そういう意味では本書は原題の『COMPANY MAN』の方がしっくりくるような気が
する。