今日読み終えた本

女たちの真実 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

女たちの真実 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞をはじめ、ミステリー関係の賞の12冠にかがやく
ローラ・リップマンのサスペンス長編である。
舞台は著者であるリップマンのフランチャイズでもあるメリーランド州ボルチモア
自動車の当て逃げ事故で捕まった女性が、「わたしは30年前に行方不明になった
姉妹の、当時11才だった妹の方だ。」と告白するところから物語ははじまる。
確かに1975年に、サニーとヘザーのベサニー姉妹が、週末のショッピングモールで行方不明となり、事件は未解決のまま迷宮入りとなっていた。果たしてその女性は
本当にヘザー・ベサニーなのか。だとしたら今まで30年間どうしていたのか。
なぜ今頃になって名乗り出たのか。
ストーリーは、もろもろの謎を捜査するインファンテ刑事らを中心とした部と、
事件発生と、子どもを失った両親や、どうやらヘザーらしい女性の失踪後の行動を綴った、1975年、1976年、1983年、1989年の部とが交互に描かれる。
それらを読み進んでいってもいっても謎は深まるばかりでいっこうに物語の落ち着く先は分からない。そして、終末近くになって、ヘザーの母親がメキシコからやってきて、
思いもかけぬどんでん返しが用意されていた。
私は、本書を謎解きが主体のパズラーのように、早く真相が知りたくて読み進んでいったが、読み終えて思うことは、確かに謎解きのスリルはあるものの、この長い物語の
ほんとうの主旨は、「家族とは」、「生きるとは」、そして「愛とは」どういうことなのかを
ひとりの女性を通してじっくり読者に訴えかけることだったのではないだろうか
ということである。