今日読み終えた本

wakaba-mark2008-05-17

レベッカ (上) (新潮文庫)

レベッカ (上) (新潮文庫)

レベッカ (下) (新潮文庫)

レベッカ (下) (新潮文庫)

1938年刊行の「20世紀ゴシックロマンの金字塔」と言われる、ヒッチコックの映画でも有名な作品の新訳版である。
うら若きヒロインの‘わたし’は、20才以上も年の離れたイギリスの貴族に見初められ、マンダレーという地所の、豪壮な館で新婚生活を始めるが、そこには前妻レベッカの影が・・・という物語である。
序盤は抒情的な恋愛小説の趣があるが、中盤は使用人や夫の親族はもとより、近所の人々からも「才色兼備で活動的で誰からも好かれていた」レベッカと比べられ、右に左に揺れ動く‘わたし’の心理描写がなんとも頼りなげで切ない。
そして終盤、一年前に溺死して下流に流され、夫マキシムによって確認されていた
はずのレベッカの本当の遺体が、ヨットのキャビンに閉じ込められて湾の底で発見
されるに至って物語はミステリー的な急展開をみせる。
不可解なラストは、もう一度第一章と第二章を読み返してみないと分からない仕組みになっている。
それにしても、この物語の骨格をなしているのは、いうまでもなくマキシムの告白の中でしか描かれず、作中一度も登場しないレベッカのその存在感であろう。70年もの間読み継がれ、今なお高い評価を得ている秘密はそこにある。