今日読み終えた本

毒魔 (新潮文庫)

毒魔 (新潮文庫)

G・M・フォードによる<フランク・コーソ>シリーズの第4作。
シアトルの市バスターミナルで、劇物が撒かれ、多数の死者が出る。後に劇物
遺伝子操作された細菌兵器で、犠牲者の数は116名とわかる。市当局はテロ行為と
断定する。
たまたま居合わせたコーソは厳重な立ち入り禁止措置が取られている場所に、連邦
緊急事態管理庁(FEMA)の職員に成りすまして入り込んで、事件とかかわりを持つ
ことになる。彼は、国家権力とは別にテログループを追求してゆく。そこにこのシリーズ
独特の、タフガイ、コーソの孤高の活躍を読むことが出来る。やがて、究極のテロ行為を準備するグループと、その意外な背景が明らかになる。アメリカ人を憎んでいるのは決してイスラム教徒ばかりではなかったのだ。
明らかに「9・11」以降の物語であり、発端はオウムの地下鉄サリン事件を彷彿とさせるが、G・M・フォードは、ただひたすらテロリストを極悪人として描いたり、テロの恐怖
だけを強調したりしているわけではない。
コーソの行動を通して、「9・11」以降のアメリカのあり方に対する批判的な視線も
含め、従来のテロ小説やノンフィクションなどとは一線を画するエンターテインメントに仕上げている。
本書は、テロを題材とした、つい時の経つのを忘れて読みふけってしまう、手に汗握るドラマである。