今日読み終えた本

絆 (集英社文庫)

絆 (集英社文庫)

’88年度「第41回日本推理作家協会賞」受賞作。
文庫の帯の「書店員さん大絶賛!!」の惹句に、思わず7刷目の本書を手にとって
みた。
「夫殺し」の起訴事実をすべて認めた被告人と、あくまで無実を主張する弁護人。
事件の「真相」を明らかにして、無実を勝ち取ることが、被告の利益を最優先するのが務めの弁護人にとって、いいことなのかどうか、これが本書のテーマのひとつである。
裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な事実・・・。
裁判とは何なのだろうか。真実が明るみに出ることは、ある人間の不幸を導き出す。
被告人は、このことを避けるために、無実の罪を背負う覚悟をしたのだ。
このドラマこそが本書のもうひとつの、そしてメインのテーマである。
本書は、終始、法廷内だけを舞台にして、‘私’こと、ある司法記者の目を通して、進行してゆく審理を追ってゆく。この独特のスタイルが、弁護人の行動、証人たちの証言、被告人の心理状態を生き生きと描写する結果を生んで、ただの法廷ミステリーの範囲を超え、本書をして、発表から20年経っても色褪せない感動の人間ドラマとならしめている。