今日読み終えた本

遙か南へ (文春文庫)

遙か南へ (文春文庫)

’95年、「このミステリーがすごい!」海外編第15位にランクインした、“脱ホラー作家宣言”したマキャモンの三冊目の長編。
ひとつ前の作品『少年時代』も、この年同第2位にダブルランクインしている。
1991年8月、ヴェトナム帰還兵のダンは42才。枯葉剤の後遺症で白血病、脳腫瘍を患い、余命いくばくもない。
そんな彼は、はずみで銀行員を撃ち殺し逃亡することになる。
彼はもちろん警察にも追われるが、銀行が懸けた賞金目当ての二人組−ひとりは
三本腕のプロの賞金稼ぎでもうひとりは、胴元から押し付けられたプレスリーのそっくりさん−にもつけまわされる。
そして逃亡行の途中で、顔半分に痣のある若い娘アーデンを拾い、気は進まぬながらも彼女の目的に付き合う羽目になる。
この4人の“アウトサイダー”が「生きる場所」を探して、南へ、南へとさすらう物語が
本書である。
「彼から見れば、わけのわからないのが人生だった。なんの考えもなく造られた迷路のようなもので、彼やアーデンや賞金稼ぎのあの二人組といった、似たような人間たちが、目隠し状態で、行く手を阻む壁にぶつかりながら通路をうろついているのだ。」
本書は、ヴェトナム以降の病んだアメリカを象徴するかのようなフリークス趣味が顔を出し、最後はファンタジーの世界へと突き抜けてしまうロード・ノヴェルの傑作である。