今日読み終えた本

前世療法

前世療法

『治療島』、『ラジオ・キラー』に続く、セバスチャン・フィツェックのドイツ発サイコ・スリラー第3弾。
ベルリンの、脳腫瘍で余命いくばくもない10才の少年ジーモンは死への恐怖を和らげるために「前世療法」を受ける。そこで彼は前世で連続殺人犯だったことを思い出す。彼は45才の敏腕弁護士シュテルンに、自分の前世の殺人の弁護を依頼するのだったが、果たしてジーモンが言った通りの場所から、彼が生まれる5年前に殺害された
白骨死体が見つかる。
そこからこの物語の主人公であるシュテルンの悪夢が始まる。彼は正体不明の男から脅迫を受け、いやおうなく事件に巻き込まれてゆく。脅迫は10年前、産まれたばかりの息子を乳幼児突然死症候群で失い、いまだにその古傷から癒えないシュテルンの傷口をえぐるような内容を伴っていた。
死体発見の連続、殺人、児童虐待、脅迫、警察からの逃走と、わずか数日の間にシュテルンのまわりで次々と起こる非日常的な奇怪な出来事に、彼は想像を絶する痛みを感じるのだった。
とにかく、短い章立てで、これでもかとばかりにスピード感を持って語られる物語に
翻弄されっぱなしであるが、第5部と第6部でついに明らかになる「事実」と「始まり」で、読者はやっと肩の荷が下りたような気分になる。
本書は前2作、特に『ラジオ・キラー』ほどのノンストップ・ジェットコースター・サスペンスではないにしても、圧倒的なリーダビリティーを持ったページ・ターナーである。