今日読み終えた本

18秒の遺言 (ヴィレッジブックス)

18秒の遺言 (ヴィレッジブックス)

話題をよんで19カ国語に翻訳されたというジョージ・D・シューマンのデビュー作。
ヒロインはふたり。ひとりは、死者の手を握ると、その人が死ぬまでの18秒間が見えるという特殊能力を持つ、フィラデルフィアの盲目の美女シェリー。彼女はその能力を使って数々の犯罪事件の解決に手を貸してきた。
もうひとりはニュージャージー州のリゾート地ワイルドウッド警察の警部補ケリー。彼女はちいさな娘ふたりがいて夫とは別居中。自分の実力で昇進したのに、男の部下からはやっかまれている。
ストーリーは主にケリーが頭を悩ます連続女性誘拐事件を中心に進んでゆく。容疑者は見つかるものの捜査は難航していた。ケリーは、ついにシェリーの協力を仰ぐことになるのだが、癌に侵されて余命いくばくもないため30年間の服役生活から釈放され、復讐の鬼と化した凶悪な連続殺人魔が彼女らを狙っていた・・・。
タイトルから一見荒唐無稽な霊感ドラマのように見られがちだが、本書の本領は、
鑑識をはじめとするケリーの地道な捜査活動を中心としたリアルで地道な警察小説にある。
また、シェリーとケリーの私生活も克明に描かれ、公私共に悩む彼女たちの等身大の姿は読むものに共感をあたえる。
本書は、警察捜査を知り尽くしたベテランの警察官だったシューマンならではの緻密
かつ独創的な物語である。