今日読み終えた本

ブルー・ヘヴン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-1)

ブルー・ヘヴン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-1)

C・J・ボックスといえば、ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケットを主人公にした
シリーズで有名だが、本書はノン・シリーズものの長編である。
舞台はやはりアメリカ北西部アイダホ州のそのまた北部の小さな町。4月のある日、釣りに出かけた幼い姉と弟は、森で殺人事件を目撃してしまう。犯人たちに見つかったふたりが逃げ込んだのは寂れた牧場だった。
実は犯人たちは引退した元警察官で、ふたりのこどもの口封じのため、地元の保安官が組織する捜索隊にボランティアとして参加するのだった。
彼らは8年前にロサンジェルス郊外の競馬場で起きた現金強奪・殺人事件とも関係がありそうで、それを調べに来た執念の元刑事や、強奪された現金のロンダリング
手を貸してしまった煩悶する銀行家を脇役に配しながら、ストーリーは老牧場主を中心にスリルを盛り上げながらぐいぐい進行してゆく。
この牧場主ジェスの人物造形がいい。妻に去られ、息子は精神を病んで別に暮らし、牧場は人手に渡る寸前で、唯一の従業員を解雇したばかり。しかし、自分の信念を
何より大事に考え、正義を貫き、こどもたちを守り、徒手空拳で、官憲を味方につけた悪人たちと闘うのだ。
「ベストを尽くし、たとえ死ぬことになってもやってみなくては。失うものはなにもないのだ。」
本書は、“読みだしたら止まらない”、ウエスタン・サスペンスの逸品である。