今日読み終えた本

死のエンジェル (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

死のエンジェル (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

本書は、女性保護観察官キャロリンを主人公にしたサスペンス・シリーズの第1作
である。保護観察官の仕事は、刑務所からの(仮)出所者や、刑事裁判で保護観察
つきの執行猶予判決を受けた人の更生や指導をするわけだが、アメリカではそれ以外にも判決前報告書の作成をおこなうこともあるという。いずれにしても多忙な仕事
であることは間違いないが、キャロリンは、37才で、15才の息子と12才の娘がいるシングルマザーという設定だ。彼女は、夜学のロースクールにも通っている。
麻薬と酒におぼれて養育費もまともに払えない元夫はあてにできず、仕事と母親業
と学生の3足のわらじをはいて、文字通り、目がまわるような、ストレスの多い毎日を送っている。
そんな彼女に、きわめて慎重な対応が求められるあらたな任務が課せられる。
23年前に殺人を犯した統合失調症のダニエルが仮釈放され、その保護観察を
任されたのだ。キャロリンは面談を重ねるうちに、彼は冤罪をこうむったのではないかと思い始める。やがてその疑念を裏付けるような事件が立て続けに起こる。
ふたりでいるところを爆破されたり、ダニエルが狙撃されたりしたのだ。
彼女は、ソウヤー刑事の助けを借りながら、過去の事件の再調査を開始するの
だったが、何者かの魔手はキャロリン自身や子供たちにまで及ぶ。
果たして事件の行方は・・・、そして真犯人は・・・。
読者は最後まで片時も目が離せないまま、ついつい一気読みしてしまう。
本書は、キャロリンの、自身の生活とキャリアを危険にさらしてまで正義を全うしよう
とする姿と、愛情深い母親である姿と、自分を癒してくれる男性の存在を切望して
揺れ動く女心とがあわせて描かれており、読みどころの多い力作である。