読書記録2

最高処刑責任者〈上〉 (新潮文庫)

最高処刑責任者〈上〉 (新潮文庫)

最高処刑責任者〈下〉 (新潮文庫)

最高処刑責任者〈下〉 (新潮文庫)

ジョゼフ・フィンダーといえば、デビュー作の『モスコウ・クラブ』をはじめとして、
『ゼロ・アワー』や『バーニング・ツリー』など、国際的な謀略小説を書いていたが、
『侵入社員』、『解雇通告』、そして本書と、すっかり“企業サスペンス”ものの作家というイメージが出来上がってきた。
ジェイソン・ステッドマンはボストン在住で、日本の家電会社エントロニクス社のアメリカにおける子会社に勤める営業マンである。大口の法人相手に大型の液晶ディスプレーやプラズマディスプレーをセールスするのが仕事だった。過去には優秀は成績を収めたことはあるが、最近はあまりパッとしていなかった。この時期、どこの企業でもある
ように、リストラや合併話も持ち上がっており、落ち着かない日々を送っていた。
しかし、ある日自らが起こした自動車事故でカート・セムコという元陸軍の特殊部隊員と知り合いになり、それが転機の始まりとなった。自分の仕事は絶好調に。おまけに
競合企業の敏腕セールスマンの引き抜きにも成功する。さらに社内の上司やライバルたちには不運が続く。彼は、出世の階段を一気に昇りつめ、営業担当の副社長にまでになるのだった。ところが、それは、陰でカートによる恐ろしい裏工作がされていたのである。ついに死亡事故まで起こるに及んで、不審を感じたジェイソンにもカートの魔の手がのびる・・・。
本書は、スリラー系の団体、ITW(インターナショナル・スリラー・ライターズ・オーガニゼーション)の「スリラー・アワード」の’07年度最優秀長編賞を受賞している。
このことからも証明されるように、本書は、ありきたりの企業ミステリー小説の枠を超えた、サスペンスフルでスリルに満ちた、サイコやホラーの要素さえ併せ持つ作品なのである。