読書記録64

大聖堂-果てしなき世界(上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂-果てしなき世界(上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂-果てしなき世界(中) (ソフトバンク文庫)

大聖堂-果てしなき世界(中) (ソフトバンク文庫)

大聖堂―果てしなき世界 (下) (ソフトバンク文庫)

大聖堂―果てしなき世界 (下) (ソフトバンク文庫)

1500万部を突破して世界が瞠目した『大聖堂』。ケン・フォレットは3年の歳月を
かけて、邦訳版は文庫上・中・下巻合計1999ページという前作を凌ぐボリュームの
巨編を18年ぶりに続編として送り出した。
舞台は同じイングランドのキングスブリッジ。時代はあれから約150年後の14世紀
である。本書では大聖堂はあくまでシンボル的な存在であり、前作で活躍したトムや
ジャック、アリエナの末裔たちが織りなす人間ドラマが主流である。
主人公格のマーティンとカリス、グウェンダをはじめとする登場人物たちが幾多の試練に見舞われながら、物語は1327年11月から1361年11月までの34年間が
描かれる。
はじめは橋の崩落、フランスとの100年戦争で荒れた国家、さらにはヨーロッパを
席捲するペストの猛威。これらの災厄にくわえて、さまざまな人々の野心、貪欲、希望、愛憎、そして復讐、人間の生み出すさまざまな思いと葛藤。読者は、思わずマーティンやカリス、グウェンダらに感情移入してしまい、ある時は絶望し、ある時は憎悪し、
またある時は喜びに打ち震えること請け合いだ。
また、彼らが子供時代に遭遇した“事件”の謎がこの長い長い物語の最後になって、“幸運の切り札”として解き明かされ、利用されるといった仕掛けもほどこされている。
本書は、前作ほどの歴史絵巻的なスケール感は感じられないが、個々の人間の営みがより一層身近に、まるでそこにいるかのように読者に訴えかけてくる。まさに稀代のストーリー・テラー、ケン・フォレットがつむぎ出した14世紀イングランドの一大ロマン
小説である。