読書記録77

石が流す血 (ランダムハウス講談社文庫)

石が流す血 (ランダムハウス講談社文庫)

英国におけるミステリーの頂点、「CWA(英国推理作家協会)賞」’08年度ダンカン
・ローリー・ダガー賞(旧名称ゴールド・ダガー賞・最優秀長編賞)受賞作。
年明け間もないロンドンで、51才の女性弁護士マリアンが高級ホテルの6階の
バルコニーから投身自殺する。仕事も順調で、キャリアの絶頂にあり、豪華な住居を
手に入れたばかりの彼女がなぜ・・・。
マリアンの遺言執行者のトーマスは、若い法廷弁護士ピーターの力を借りて、その死の謎を追いかける。彼らはマリアンが最後に関った事件の法廷記録を紐解いてゆく。
物語は、マリアンによって救われる形となった元被告のリック、マリアンの情け容赦のない法廷戦術で責めたてられ、自殺してしまった証人エンジェルの姉ヘン、そして
かつてマリアンの愛人だったとされる老人スタントンらが、トーマスやピーターと関りを持って進行してゆく。
ひとりの今は亡き女性のために、残された人々の人生が交錯し、更なる悲劇が
訪れる。そういう意味では、本書は、冒頭に少ししか登場しないマリアンこそが主役と
いってもいいだろう。
最後まで読んでも決定的な結末がよく分からなかったので星2つとしたが、
人間の心の闇を表現したところがCWA賞受賞の理由なのだろうと思う。