読書記録79

二度死んだ少女 (講談社文庫)

二度死んだ少女 (講談社文庫)

世界最大のミステリー・コンベンションで、作家・評論家のアンソニー・バウチャー に
ちなんで名付けられた「バウチャーコン」で大会参加者の投票で選ばれるその主催の賞「アンソニー賞」の’05年度最優秀長編賞受賞作。ミネソタ大自然に生きる
<コーコラン(コーク)・オコナー>シリーズの第4作である。
舞台はカナダ国境に近いミネソタ州北部のアイアン湖畔にある小さな町オーロラ。
ある17才の女子高生が大晦日の深夜から行方不明になる。必死の捜索のかいもなく
彼女は見つからなかった。そして四ヶ月近く経った雪解けの季節になって遺体として
発見される。現場検証と検死の結果、殺人事件と断定され、ソレムというオジプア族
インディアンの少年が犯人として逮捕される。状況証拠はソレムにとって完全に不利であったが、元保安官のコークは彼の無実を確信する。
こうしてソレムの弁護を引き受けた妻ジョーを助けるかたちでコークの真犯人探しが
始まる。コークの調査は困難を極めるが、やがて女子高生の父親の過去をたどる
うちに、彼女が“二度死んだ”事実に行き当たる。こうなるともうあとは結末の驚愕の
真相まで一気呵成である。
物語にちりばめられた大自然の風土、神と神秘的な超常現象、白人と原住民である
オジプア族インディアンの関係、そして、終始サスペンスフルな展開は、家族と大自然を愛する混血のヒーロー、コークを引き立てている。
本書は、ミネソタ大自然を背景にした、巻末の児玉清の解説による「男らしさ」を
具現するコークの、スリリングでかつ骨太のヒーロー・ストーリーである。