読書記録81

火焔 (集英社文庫)

火焔 (集英社文庫)

ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに発売と同時に第1位を獲得した作品。サンドラ・ブラウンは、もともとはロマンス小説家であるが、年に1作程度本書のようなサスペンス・エンターテインメントを世に送り出している。
舞台はアメリカ南東部サウスカロライナ州の大西洋に面した都市チャールストン
ストーリーは地元テレビ局の美貌の報道記者ブリットが、プレイボーイで名高い刑事
ジェイの寝室のベッドで何も身に着けない状態で目覚めるところから始まる。ジェイは彼女に何か重大な“特ダネ”を提供しようと呼び出したのだが、たった一杯のワインで前後不覚に陥ってしまい、彼の家にたどりついてからの前夜の記憶がまったく
なかった。
やがてジェイが枕を顔に押し付けられて窒息死していたことが分かると彼女に疑いの目が向けられる。ブリットは、元消防署の火災捜査官で、5年前に彼女と同じような
体験をして何もかも失ったラリーに半ば強引に連れ出される格好で、真相の究明に
乗り出す。
事件の謎はどうやら5年前のチャールストン市警本署の火災にあり、その時に大勢の人々を救い出したとして一躍ヒーローとなった4人の周辺にあるらしいことが分かるが、何者かがふたりを執拗に付けまわし、命の危険にさらされる。
危機、また危機、逆転また逆転の連続、疾走するサスペンス。いつしかふたりの行く末と安否に心奪われながらサンドラ・ブラウンの織りなすストーリーテリングに読者は翻弄され、ページを捲る手が止まらなくなる。この先ふたりはどうなるのか・・・、
果たして事件の真相は・・・、そして黒幕は誰なのか・・・。
本書は、ラストの“どんでん返し”まで、641ページもの長さを苦もなく一気読み
させる、仕掛け尽くしの<サンドラ・サスペンス>である。