読書記録9

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

’08年、「このミステリーがすごい!」海外編第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」
海外部門第2位に輝いた『チャイルド44』の続編。三部作になるということなので、
本書は<レオ・デミドフ>シリーズのちょうど中間点に位置するのだろう。
’09年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第4位、「このミステリーがすごい!」海外編第6位にランクインしている。
前作から3年後という設定で、スターリン亡き後実権を握ったフルシチョフスターリン批判で幕を開ける。スターリン時代に横暴を極めた秘密警察が今度は復讐の標的となるのだった。念願の殺人課を開設したレオとても例外ではなかった。しかも彼は前作で養女としたゾーヤが一向に家族に心を開こうとしないことに悩んでいた。
ストーリーは、このゾーヤがからみ、不当な扱いを受けてきた者たちの復讐の標的
となったレオの苦難がこれでもかと描かれてゆく。
モスクワの下水道の追跡シーン、オホーツク海の囚人護送船上の死闘、強制労働
収容所での熾烈な拷問、そしてラストのハンガリー動乱まで、愛する家族であるゾーヤを救うために波乱万丈のレオの冒険がハード・ボイルドタッチで展開してゆくのだ。
本書では、一気読み必至の面白さを秘めた、派手なアクションシーンが目立つが、
根底にあるのはレオの家族愛である。きのうまでの常識がきょうは非常識になるという苛酷な運命に翻弄されながら闘うレオの姿には心打たれるものがある。
ヴォリ(強制労働収容所で兄弟の絆を深めた犯罪者集団)の女性リーダー・フラエラの存在感も強烈に胸に響いた。