読書記録17

Story Seller〈2〉 (新潮文庫)

Story Seller〈2〉 (新潮文庫)

<DREAM TEAM is BACK 読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並>を
キャッチフレーズにした7人の人気作家たちによるアンソロジー第2弾。
『マリーとメアリー ポーカーフェイス』沢木耕太郎:お酒のお話をメインにしたエッセイ。「国際線の飛行機に乗ると・・・」というところがなんかこう“旅”をイメージさせて沢木氏らしい。
『合コンの話』伊坂幸太郎:ある3対3の合コンとそれにまつわるお話。紙の上の文章でこんなことができるのかという短編ならではの実験的な作品。
レミング近藤史恵:名作『サクリファイス』の前日譚にあたるエピソード。
自転車ロードレースの世界を知りつくした近藤女史の独壇場なのだろうが、彼女は
いつになったら『サクリファイス』の呪縛から卒業できるのだろう。
『ヒトモドキ』有川浩:この作品集の中で一番怖いお話。こんなとんでもない人が近所や身内にいたら、と思いながらも目はまったく固有名詞が出てこないこの小説に釘付け
になるほどの傑作。
『リカーシブル―リブート』米澤穂信:複雑な家庭の女子中学生の引越し先の街での
出来事を弟のサトルと友達のリンコと絡ませて描いている。
多感なハルカの心象風景が新鮮。
『444のイッペン』佐藤友哉:444匹のペット犬が忽然と消えるという不可能犯罪の
お話。殺人事件まで起こり、前作同様謎の過去を持つ‘オレ’こと土江田(とえだ)の
オフビートな一人称叙述は味読の価値がある。探偵役の赤井も再登場して華をそえている。
『日曜日のヤドカリ』本多孝好:男と女、親と子(たとえ血がつながってなくとも)の、
ちょっとイイお話。
本書は、『Story Seller 』同様、惜しいけれども一気に読んでしまうリーダビリティー
あふれた作品集であると共に、それぞれの著者のプロフィールと著作リストも完備しており、初心者でも、読書マニアでも安心して読め、さらに新しい発見があり、第3弾が
待ち遠しくなるアンソロジーである。