読書記録18

張り込み姫 君たちに明日はない 3

張り込み姫 君たちに明日はない 3

坂口憲二主演によりNHKでドラマ化された、<リストラ請負人・村上真介>シリーズの第3弾。私はドラマこそ観なかったが、自身リストラされた身なので、このシリーズは
はじめから興味深く読んでいる。第1集は、真介と恋人になる陽子を中心とした
バラエティの要素が強く、第2集は、リストラ対象者の内面に切りこんだやや重い
人間ドラマの様相を呈していた。第3集である本書は『小説新潮』’08年7月号から
’10年1月号にかけて掲載された4つのFileからなっている。
本書でのターゲットは、英会話学校の講師、旅行会社の営業マン、自動車ディーラーのチーフ・メカニック、そして出版社の写真週刊誌担当記者である。
例によって垣根涼介による今現在の綿密な各業界のリサーチがなされ、それぞれが有名な大手といえども、昨今のリーマンショック新型インフルエンザ等の打撃を
受けたこのデフレ不況という現実味がいやおうなくリアルタイムで迫ってくる。
本書も真介・陽子のコンビは脇役で、それぞれのリストラ対象者が主役の物語だが、第2集の時のようなドロドロ感はなく、紆余曲折はありながらも彼らは自分の道を模索あるいは見つけ、読後は爽やかなものを感じる。特にFile3「みんなの力」などはその代表格で、それぞれが未来・明日に向かう前向きな姿勢がそうさせるのだろう。

シリーズものには時代によって内容に変化があるものだが、そういう意味では、
本書に限って言えば『君たちに明日はない』というサブタイトルは似つかわしくないのではと思った。