読書記録19

疫病神 (新潮文庫)

疫病神 (新潮文庫)

北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)の実情について興味があったので、同じ黒川博行の『国境』を読んでいたら、Amazonのレビューで『国境』は本書の続編で、先に本書を読んだ方が良いという記載があるではないか。あわててネットで中古本を購入して
読んだ。
舞台は大阪。物語は、ミナミの雑居ビルでしがない建設コンサルタントを営む二宮が、ある産廃の中間処理業者から工事を申請するに当たって必要な水利組合長の印鑑を成功報酬500万円でもらう依頼を受けたところから始まる。補償金の値上げをたてにくだんの水利組合長は判を捺し渋っているという。ここから相棒となるカネの匂いを

嗅ぎつけた極道の桑原と共に、産業廃棄物の処分地をめぐっての、ゼネコン、
土建屋コンサルタント、不動産屋、地上げ屋、地方議員、極道たちの、複雑に絡み
合った利権争いの渦中に巻き込まれるのだ。
このワルふたり組みが、さらなるワルどもを相手にドツキ、ドツカレ、敵味方入り乱れ
ながら利権の山を掻き分け、命の危険にまでさらされ、問題の真相に迫っていく・・・。「ほんまにダイハードやね。」とは、二宮の事務所のバイトの悠紀(ユキ)の言葉だ。
全編大阪弁で繰り広げられる会話が物語の臨場感をいやがうえにも盛り上げていく。
本書は、産廃処理場の巨大利権に複雑にからみあう人間の欲望をテーマとしながらも、まるでパッとしない男二宮が、ここ一番、こだわりを持ってぎりぎりのところで
踏ん張る。請け負った仕事はあくまで筋を通して身体を張る姿を描き、極道の桑原と
ともに、結局は大きな儲けにはならず、元々の報酬しか手に入らないが、
そこに男たちの心意気というか矜持が垣間見える。内容はむちゃくちゃだが、
読後に妙な爽快感を感じるのはそのあたりかもしれない。