読書記録43

高い砦 (ハヤカワ文庫NV)

高い砦 (ハヤカワ文庫NV)

早川書房の『ミステリ・マガジン』のアンケートをもとに’92年に刊行された『冒険
・スパイ小説ハンドブック』において、「冒険小説ジャンル」で堂々第4位に輝いた作品。(ちなみに第1位はジャック・ヒギンス『鷲は舞い降りた』、第2位はギャビン・ライアル『深夜プラス1』、第3位はルシアン・ネイハム『シャドー81』)
機材トラブルで緊急着陸した大手の航空会社の旅客機の乗客を代換便として乗せた南米の弱小アンデス空輸の老朽小型機が、副操縦士によってハイジャックされた。
機はアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられる。犯人と乗客のひとりは死亡。重傷のもうひとりもまもなく死ぬ。生き残った操縦士のオハラたち9名は救助を求めて下山する。しかし、この中には軍事クーデターで失脚・亡命中で、復権を志す南米某国の、年老いて病気の元大統領がいた。彼を狙う共産主義者たちがオハラたちの行く手を阻み攻撃を仕掛けてきた。
ここに、闘いにはまったくしろうとの乗客たちが、それぞれの分野の特技を生かして、徒手空拳で、廃坑となった鉱山小屋から、そこにあるものだけから手製のユニークな前時代的な武器で、完全武装した敵と闘うのだ。
読みどころのひとつは、富士山より高い5000メートル級の高地という苛酷な自然
環境でのこの攻防であり、もうひとつは、敵のいない嶺の反対側に救援を求めに、
これまた貧弱な装備で、雪嵐の中5800メートルの厳寒の峠を越えようとする3人の男たちの苦闘のシーンである。前に敵、後ろに険峻な峰峯、絶体絶命のピンチが続く。果たして彼らは無事に救助されるのか・・・。
本書は、壮大苛烈で克明な自然描写と乗客たちそれぞれの行動・心理描写が読者を圧倒する、究極のサバイバル冒険小説である。