読書記録58

wakaba-mark2010-07-06

さよならまでの三週間 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-2)

さよならまでの三週間 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-2)

“現代のウェスタン”と称される、ワイオミング州猟区管理官<ジョー・ピケット>
シリーズで有名なC・J・ボックスの、アメリカにおけるミステリーの最高峰、
「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’09年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)を受賞した『ブルー・ヘヴン』の次に書いたノン・シリーズ作品。
子宝に恵まれず、念願の赤ん坊を養子として迎えた34才の‘私’ことジャックとメリッサ夫妻。ところが、ある日、その赤ん坊の実父の18才の少年と、その父親である人望
厚い連邦裁判所判事が、親権を主張し、三週間という期限で赤ん坊を返せといって
きた。少年はメキシコ人のギャングとつるむ札付きのワルで、‘私’たちにいやがらせを繰り返す。将来も含めて赤ん坊のことを思うと心情的には‘私’たちのほうが有利
だが、法律的には圧倒的に相手方に分がある。
ここに、‘私’の、友人たちの協力を得た三週間の闘いがはじまる。
ストーリーは、「残り・・・日」というように、その中に殺人あり、実力行使的な事件ありと
スリリングにタイムリミット的な進行をする。そしてついに「その日」がやってくるのだが、その先にはなんともおぞましい真相と結末が待っていた。
本書は、‘私’が1年前の三週間を思い出して綴った手記の体裁をとっているが、
そこからは、正義を信じ、家族を思い、自らの信念を重んじて生きる不器用な男が、
圧倒的に不利な状況の中で悪と立ち向かう、アメリカ人の魂というかヒーロー像を
うかがうことができる。