読書記録77

wakaba-mark2010-09-14

八日目の蝉

八日目の蝉

もとは’05年11月から’06年7月まで「読売新聞」夕刊に連載された、直木賞作家
角田光代の“泣ける”感動作。檀れい北乃きい出演によりNHKでドラマ化され、
’10年春放映された。
ドラマを観て感動した妻が「BOOK OFF」で見つけた原作の単行本を私も手にしたわけである。
不倫相手の乳幼児を誘拐し、3年半も逃亡生活を続けた野々宮希和子。彼女により薫と呼ばれて暮らし、希和子逮捕と共に本当の親元へ帰され、今は大学生となった秋山恵理菜。しかし恵理菜もまた妻子ある男の子供を身ごもる。
希和子と薫の逃亡生活を三人称で1章、2章では一人称で主に恵理菜のことを描き
ながらも希和子事件の実際のあらましにも触れている。この小説からは、このふたりの“母性愛の強さ”を感じないではいられなかった。
世間一般には「犯罪」として、また「愚かな女」として「間違ったこと」をした
シチュエーションだろうけれども、すべてを捨ててもただひとつの大切なものを守りたいという思いが行間から切々とうかがわれるからである。
新聞連載小説でありながらこれほど魂が揺さぶられる物語を読んだのは、吉田修一の『悪人』以来であった。
とりわけ、ラスト数ページの希和子の描写が、ここまで読んできた者のこころをしっかりと捉えており、言葉ではいえないほどの余韻を残している。