読書記録87

チャイナ・レイク (ハヤカワ・ミステリ文庫)

チャイナ・レイク (ハヤカワ・ミステリ文庫)

メグ・ガーディナーのデビュー作である本書は、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’09年度ベスト・ペイパーバック・オリジナル
(最優秀オリジナル・ペイパーバック賞)受賞作である。メグ・ガーディナーはもともと
アメリカ生まれで結婚後夫の母国イギリスに移住、’02年に本書を発表するが、
7年の後、巨匠スティーヴン・キングに絶賛されアメリカでようやく刊行され、この栄誉に輝いた。
‘わたし’ことエヴァン・ディレイニーは、カリフォルニア州サンタバーバラ在住の弁護士兼SF作家。米海軍戦闘機パイロットである兄ブライアンのひとり息子6才のルークを預かっていた。ここに<レムナント(“生き残りし者”)>という狂信的カルト教団
現れ、2年前にブライアンとルークを捨てて出て行って今は教団に入信したタビサを
先頭にルークを誘拐しようとする。エヴァンは、旧友や恋人で弁護士のジェシー
兄たちの力を借りてルークを必死に守ろうとする。
ストーリーは、執拗にルークを狙う<レムナント>とエヴァンの文字通り血みどろの
闘いを描いてゆく。次々にエヴァンに襲いかかる“事件”。徐々に明かされてゆく、
「世界終末論」を教義とする<レムナント>の姿と最終目的・・・。
兄やジェシーも無力化されて、警察やFBI、軍などの官憲もあてにならないなか、
エヴァンはたったひとりで敵に立ち向かってゆく。とにかく危機、また危機、たたみ
かけるようなスリリングなシーンの連続、そしてカリフォルニアの山火事の業火の
クライマックスへとなだれ込んでゆく。
本書は、文庫にして645ページもの大作だが、とてもデビュー作とは思えない
ガーディナーの見事な筆さばきで、その長さをものともせず一気に読ませる
リーダビリティーを持った第一級のサスペンスである。